間を空けて続けられた答えは、本心だったのかもしれない。
でも、私にはそれが素直な気持ちで、同時に全てではないと分かってしまった。
だって、そうでなければ士郎をあそこまで嫌ったりしないと思うから。
「凛」
アーチャーがいつもの無表情に近い顔で私を呼ぶ。
「君がそんな顔をする必要は無い。これは私の問題だ」
こんな顔と言われても、自分で見れないから分からない。
「正義の味方は苦手だが…」
立ち上がり、私の側まで歩いてくる。
「君の味方でいることは約束しよう」
自信満々の笑みを浮かべて。
「君が私の正義だ」
そんな事をさらりと言ってのける。
深刻な話をしていたのに、それを吹き飛ばすこの手馴れた台詞。
心配して損したかなと思うのに、反論できない。
まさか、自分だけの味方と言われたことにこんなに動揺するなんて。
これだから不意打ちでとんでもないことを言うサーヴァントは質が悪いのだと、思った。
言いたいことだけ言って、さっさと見張りに消えてしまったサーヴァントに聞えないように呟いて、
私はどうしたらいいのか思いつくまで立ち尽くすしかなかった。


「馬鹿…」
霊体に戻る瞬間、聞こえた呟き。
真剣に私のことを心配してくれていたのに、はぐらかすようにあんなことを言ったからだろうか。
だが、言ったことは嘘ではない。
万人の正義の味方になることはお断りしたいが、彼女一人の正義の味方なら、喜んでやろう。
その手始めに、まずは彼女を聖杯戦争で勝たさなければならない。
正義の味方。
そう考えると、その言葉も少しは楽に聞える。
正義の味方と言うよりはやはり遠坂凛の下僕と言った方がふさわしいのだろうと思いながら、屋根からの監視に集中するのだった。



タイトルはあってるけれど、弓凛じゃないって気がしました。
タイトルに沿うように考えると弓凛から離れ、弓凛を意識するとタイトルから逸れる。
難しいですよね…まだまだ修行が足らないです。