html> 13.背中



自分が気づいたときにはその背中に手を当てていた。
「どうした、凛?さっきもそうしていたが…」
消えない不安、それはきっと近いうちに来る別れの予感に他ならない。
どんな別れ方にせよ、彼は聖杯戦争の終了とともに消えてしまう。
それが、嫌なんだと思う。
あまりにも自然に側にいるから、それが普通のことだと思い始めていることで…消えてなくなっては欲しくないと思っている。
「私の背中に何かあるのかね?」
アーチャーは私の行動に理解できずに怪訝な表情をしている。
実際、私だって何故背中を触るのかなんて分からないのだ。
ただ、その背中が…遠くに行ってしまうような気がして。
「アーチャー、私を後悔させて見せるのよね?」
「勿論だ、神に誓ってもいい」
「駄目よ神に誓うなんて」
背中から手を離して、私は真剣な表情でアーチャーを見る。
振り向いた彼は、私と同じように真剣な表情をしていた。
「では…君に誓おう」
「それなら…いいわ。期待してるわ、アーチャー」
視線を逸らしながら、私は頷いて助けに行く準備を始める。
私を後悔させると誓った、その言葉に嘘はない。
そう言ったなら彼はきっとその言葉を守るのだろう。
でもきっと、その約束は守られない。
彼は自分のことは厭わないで、私のことを優先する。
優先順位に、彼は自分を入れていない。
短い期間ではあるけれど、それが私の導き出した彼の性格だ。
だからこそ…本当はもっと確かなもので繋ぎたかった。
時間があるならやれたかもしれないけれど、今は悔やんだって仕方ない。
「こうなった以上はアレに勝って…そのまま聖杯を手に入れるしかないだろう」
「当たり前よ、誰だと思ってるの」
「我がマスター、遠坂凛だ」
「そうよ。頼りにしているわ」
きっと、生涯で一番の強気で、私は心の底にある不安を押し隠した。
気づかれないように、悟られないように。
ばれたら、私は彼に…いなくならないで欲しいと縋ってしまうかもしれないから。
優等生の皮を被るのなんて、この演技に比べればどうってことは無い。
上手く出来たか分からないけど、聞かれないから大丈夫なのだろう。
「アーチャー、準備はいい?」
「ああ。凛、君は?」
「OKよ。セイバーつれて、出かけましょうか」
「ああ。了解した、マスター」
神様なんて信じないけど、もしもいるのなら。
どうかみんなで帰ってこれますように…
短い祈りを残して、私はアーチャーとともに部屋を出たのだった。



うーんと…セイバールート、バーサーカー戦前の二人の会話と言うか、凛の気持ちというか。
消えないで欲しいと思い始めて、自覚した凛と…実はその感情になんとなく気づいていて知らない振りしているアーチャー。
それが捏造したイメージです。はい。
個人的に背中って、届かないイメージがあるのですよ。なのでこんな話になりました。
触れそうで触れない二人…イライラしますかね?
イライラさせちゃったらごめんなさい…きっとこのまま発展しません。
アーチャーには自分に誓わせてるのに、自分は神様に祈っちゃう所が乙女な凛様ですよ。ポイントです(え