こいつ、やっぱり知ってた!
「君が朝から顔を赤くしているのでね。むやみな事を言うと怒らせるのではないかと、黙っていたのは事実だが」
「うそ、顔赤くなんて…」
アーチャーの言葉にさっきの自分を思い返してみる。
確かに、リボンを変えるのなんて何年かぶりで緊張していたのは事実だけど…
「どういう心境の変化かね?女性がリボンを変えるというのは理由があるのだろう?」
「特に理由なんて…」
理由。本当ならある。
少しでもアーチャーに女の子らしく見えれば…なんて思って、変えてみたんだけど。
こんなこと口が裂けても言えない。
からかわれるの、分かってるし。
「…まあ、気分転換と受け取っておこう」
私の心を見透かしたかのように、アーチャーは追求するのを止めた。
「一つだけ、いいかな?」
「な、何よ?」
リボンをつけた理由は追求しないみたいだけど、何を言い出すのかは分からない。
何を言われても動揺しないように、心の準備をする。
「君は赤が似合うが…リボンはいつもの黒の方がいいな」
それは、色の感想だった。
拍子抜けしつつ、何で?と聞き返す。
取って置きのリボンなんだから、下手な理由だったらタダじゃすまない。
私の勇気を返してもらわないと。
「黒は君が持つ赤い色を引き立てるからな」
表情は少し柔らかめ。
なのに、からかうような笑みが少し浮いているのは気のせいだろうか?
「君はすぐ赤くなるからな。リボンまで赤くしたらそれこそ本当に赤い悪魔になってしまうぞ?」
「なんですって?」
やっぱりからかって楽しんでる!
今日と言う今日はガツンと言ってやらないと気がすまない。
私の持つありったけの怒りの言葉を思い浮かべていると…
「だから、私の前以外ではつけないで欲しい」
「え?何でよ」
怒りはいったん置いといて、アーチャーの言葉を待つ。
「私に見せたのが初めてだろう?私に見せるためにつけてくれた、それはとても光栄だ」
「たまたまよ、たまたま」
また顔が赤くなってきたのが分かる。
「それでもだ。他のものに見せるのがもったいないと思うくらい、光栄だったのだ」
それはいつものアーチャーから考えると信じられないくらい騎士的で紳士的な動作だった。
跪き、私の手をとる。
取った手にそのまま騎士のキス。
騎士なんだからこれくらいは出来るのを分かっているのに、鼓動は収まってくれない。
下からの視線に気づいて視線を向けて、また体温が上がる。
人の手にキスしたままで上目遣いに見ないで欲しい。
「ほ、ほら朝ごはん!紅茶冷めちゃったから淹れてっ」
急いで手を引き、アーチャーから離れる。
後ろで小さく笑ったような気がしたが、それどころではない。
席について、アーチャーが紅茶を淹れてくるまでの間に鼓動のスピードを元に戻さないといけないから。
うまくだまされた気がするけど、ちょっと嬉しかったからいいかな、なんて思うほどアーチャーのことを好きな自分に気づき、また顔を赤くしたりして。
どきどきが早く収まるのを願いながらアーチャーを待つのも幸せなことなんだなと思った。



凛様テレテレ話です。角砂糖一個分の甘さで勘弁してください(苦笑)
いつ立ち上がったのか、ご想像にお任せします。
たぶん…あそこ?