「それ以上に我がマスターに他者と声を間違われたのがショックではあるがな」
「だ、だって電話の声って違って聞えるから…こうやって話してるときは間違えないわよ」
自分の言葉に反応して、困惑する様子を眺める。
間違われたことは不愉快ではあるが、ちゃんと別の存在なのだと言ってくれる…伝えようと必死になる姿を見ていると、嬉しくなる。
他の誰が同じものだと言っても、彼女に違うといってもらえればいいのではないかという気がする。
「もう次は絶対に間違えないから」
「それはぜひともお願いしたいところだな。今度間違えるようなことがあるなら…」
困惑ぎみな凛を見ていて、少しからかってみたくなる。
それを凛に悟らせるために笑みを浮かべて見せた。
「君の耳元でしっかりと声を覚えてもらえるように囁き続けるしかないな」
「なっ、なに考えてんのよ!」
顔を真っ赤にして、それ以上近寄らないでよ、と叫ぶ。
想像通りの反応に、心の中で微笑む。
「我がマスターに覚えてもらいたくてね。朝起こしたときにアレの名を呼ばれても困るからな」
取ってつけた理由ではぐらかす。
本当の理由などないのだ。
ただ…アレの声を私の声と聞き間違えたことで、凛が気づかなければ。
気づいたとき、それでも違うといってもらえると考えているのは自惚れているのかもしれない。
ただ、アレを消すその時が来るまでは…こうして彼女とからかって笑える時が続けばいいと、思った。
「からかってるでしょ!」
「いや?ご希望とあらば今すぐにでも実行するが?」
「ばか、そんなこと希望しないわよ!」
こんな言い合いも、悪くは無い。



切れの悪い終わり方です…。
そのうちこっそりと書き直しされてるかもしれません…。
2006年最後がこれってどうなのさ?(士郎風にしてみました)