どうやらセイバーは妥協してくれたらしい。
この時初めて、干支に辰があってよかったと思った。
何とか丸く収まる…と言う雰囲気だと言うのに。
意地悪そうな笑みを浮かべる優等生が一人。
「でもセイバー、衛宮君がその話黙っていたことはいいの?」
人が黙って丸く治めようとしてるところでっ!
「む…それは良くないですね。凛に言われなければ私はライオンのことで落ち込んだままでした」
「はぐらかして話そうとしなかったしね」
「聖杯戦争を戦い抜くには信頼が必要です。嘘をつくなどあってはならないことです」
消えたはずの殺気が復活する。
「わざわざ言ってどうするんだ、遠坂?」
「決まってるじゃない、士郎が困るところを見るのよ」
恐るべし、赤い悪魔。
生か死かの問題に直面しているのに、この余裕。
他人事だから言える事だ。
「シロウ、道場の方でじっくり言い訳を聞きましょうか」
笑顔なのに背筋が凍る。
どうやら惨劇が決定したらしい。
「分かった、反省して素直に受けるよ」
覚悟は決めた。みっちりしごいてもらおう。(涙)
「では道場に行きましょうか。凛、今日のお昼は少し遅れます」
「え?あ、うん」
歯切れの悪い遠坂の言葉を聞きながら、俺はセイバーに引きずられていく。
その後、俺が居間に戻れたのはお茶の時間をとうに過ぎたころだった。



「どうした、凛?」
「うん…からかったのはいいんだけど、フォロー入れるの忘れちゃって」
凛の表情を見て、眉をひそめる。
「本当は、中国では干支には動物があてられていなかったって話して終わるつもりだったんだけど…
士郎が凄くからかいがいがあるものだから度が過ぎたかも」
「凛が落ち込む必要は無い。あの程度じゃ死なんさ」
凛が衛宮士郎を心配していると知って、心中は複雑だ。
が、そのままにもしては置けない。
いかに至らぬ過去の姿とはいえ、アレも自分。
心配してもらっていることには変わらないので、大丈夫だと諭す。
「もとより己の過失だ。自業自得だから凛が心配することは無い。それはアレが一番良くわかっている」
「そうよね、悔やんだって始まらないし」
そう笑うと、台所に向かう。
「待て、凛」
料理をしようとしている凛を引き止める。
「何?アーチャー」
「私がやろう」
私の言葉に目を丸くする凛。
「どうしたの急に…?」
「なに、気が向いただけだ」
心配してくれたのが過去の自分であっても自分を心配してもらったのには変わりない。
心配させた侘びと感謝をこめて特別に料理をすることにしたのは内緒の話だ。



長かった…もしかしなくてもお題の話より長いですよね。
弓凛出したら長くなっちゃった…(苦笑)
でも、弓凛サイトなんで、出したかったんですよ。一応。