自分で言っといてなんだけど、意味不明にしか聞えないだろう。
実際に先輩も困惑しているようだ。
「触られると都合が悪いって、何で?嫌いだから触って欲しくないって言うのが分かりやすい理由だと思うけど?」
「だからですね、違うんですよっ。触られると好きになりすぎるからで、嫌いだからじゃ…」
失言に気づいたのは、先輩の目が見開いたから。
先輩の嫌いと言う言葉を否定したくて、つい口が滑った。
どうしよう、と思ったときには体が勝手に動いていた。
無人の廊下を全力疾走する私。
教室から逃げ出してしまった。
後ろからは名前を呼ぶ声がするから、先輩も走ってきているのだろう。
逃げてきたけど、どうしよう。
言ってしまった言葉は取り消せない。
でも、このまま逃げ切ることは出来ない。
先輩、長距離専門って言っても短距離も速いし。
追いかけっこはそう時間がかからないうちに終わった。
無論、私が捕まったからだ。
「蒼葉、今の言葉…」
「聞かなかったことにしては…もらえないですよね?」
「するなんていったら大ばかだと思う」
嬉しそうな先輩の言葉。
「やっぱり…」
私はあからさまに喜んでいると分かる表情の先輩を見て、諦めた。
「蒼葉、どうせだからさ、ちゃんと言って?」
失言では告白には入れたくないらしく、先輩は無理難題を要求してきた。
「お断りします」
「拒否権なしー」
間髪いれずに返ってきた言葉に、私はしかたないなーと思うあたり、それくらい好きになってしまっていたんだろう。
「葉月さんが好きですよ、気づかなかったんでいつからかは分かりませんけど」
あっけなく陥落。
でも、好きになっちゃったんだから仕方ないかと諦めようと思った。
心の底で、部活やめといて正解だったと思いながら。
毎日こんな風に顔を合わせていたら私の心は持たないと思うし。



中途半端ですが、ここまで。
次があるなら、きっと時任君が振り回されちゃう感じの話です。
ちなみに蒼葉は結城蒼葉(ゆうき・あおば)、時任君は時任葉月(ときとう・はづき)です。
前回の話では全く名前が出てこなかったので、出せて満足です。はい。
んで、時任君は陸上部あたりだと思います。