大好きな先輩の彼だから、そんな感情は持たないのだと決め込んで。
無意識のうちにそう思い込んで、好きなのかなんて考えないようにしていた。
だから、好きになることは出来ないと思っていた。
「もしかして、対象に入れてもらえてなかった?」
私の言葉を聞いて、先回りして聞く。
私は小さく頷いた。
逃げていたのは自分の気持ちからだったということに気づいて、一つ溜息をついた。
肩の力が抜けた気がする。
「じゃあ、これからは対象に入れてもらえるかな?」
「それには答えかねます」
嘘じゃないけど、本当でもないこと。
気づいてしまったら、つっかえていたものが取れたみたいに身軽になった。
「手厳しいなぁ。でも好きな人がいるんじゃ、仕方ないか」
先輩は私の言葉を対象に入らないと受け取ったようで苦笑していたけれど、私は違う意味で考えていた。
すんなりと落ちてきた答えは、気づけば簡単なものだったから。
気づいてしまえば、対象なんてカテゴリーではないのだと分かったから。
「多分先輩は対象ではないです。これから先も」
だって、今まで側にいてそれが当り前だと思っていたその気持ちの根拠は、きっとそういうことだと思うから。
「対象ではないって…?」
私の言葉に戸惑う先輩。
「私の一番って、一人だけなんで」
そう言い残して、私は学園祭真っ只中の友達のいる中庭へと戻る為に歩き出す。
「好きな人がいるのは聞いてるけどさ」
私の言いたい事が分からないと、先輩は後をついて来ながら問う。
「あ、それ嘘です」
「でも、一番は一人だけって言ったじゃん」
しばらくは、このままでいよう。
やっと気づいたんだもの。少しくらい楽しんだってばちは当らないと思う。
もう少しだけ楽しんで、分け合いたいと思ったら、告げよう。
今度は私から、あのときと同じ場所で。



突発小説(?)です。
私にしては珍しいくらいストレートな恋愛ものです。
というか、こんなじれったい人は書いたこと無いんですよ。
だって、書く人たちってみんなバカップルだから(爆)。
ちなみにこれ、ちょっとだけ事実入れてみてます。当事者呼んだらもろばれですよ…怖いなぁ(汗)