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11.椅子

私は椅子に座っていた。
自分の部屋の、自分の机に向かって。
徹夜で魔術と格闘していたら、いつの間にか突っ伏して眠っていたのだ。
ちょっと血を採りすぎて貧血が起きているから、ねたというよりは意識を失っていたと言う方が正しいだろう。
私一人で生活している分には、このまま回復を待てばいい。
だけど、今は世話焼き(本人否定)なサーヴァントがいるから、しゃっきとしていないと何を言われるか分からない。
横目で時計を見ると、針はもうすぐ起こしに来る時間を指そうとしている。
こんな姿を見られたら、きっと無茶をするのはよくないとか、体調管理ぐらいしっかりとしろとか言われてしまう。
どうにか表面だけでも平静を装えるようにしたいけど、体が言うことを利かない。
困った。非常に困った。
もう、階段を上がり始めている気がする。
目を瞑っていれば、寝ているのだと勘違いしてくれるだろうか?
貧血で突っ伏して気を失っていたなんて知れたら大変だ。
寝ていると勘違いしてくれればそれでいいと決めて、私は寝たふりをした。
この際、寝起きが悪いとかそういうのは目を瞑ることにしよう。
コンコンとノックが聞える。
「入るぞ」
いつも通りの声。
扉が開き、閉まる。
私の姿を見つけて、一つ溜息。
「こんな所で寝ていると風邪を引くぞ、凛」
声をかけてから近づく。
ちゃんと聞えているけど、私は起きない。
立ち上がれない、体も起こせないと知られたら大事だ。
寝過ごしていると勘違いしてくれればいい。
ぽん、と肩に手が置かれる。
「凛?」
置かれた手は動かない。
視線も動かないでじっと顔を見下ろしている。
顔になんかついてるのかしら?
そう思った時だった。
私の肩に置かれた手はそのままで、椅子が動く。
後ろに何て引いたら、落っこちてしまう所だけれど、私の体は落ちなかった。
どうやらアーチャーの腕で机からの落下は免れたらしい。
「凛」
斜め下あたりからの呼びかけ。
顔を覗き込んでいるらしい。
「…仕方ないな」
呼びかけに答えない、目を開けない私に対して、アーチャーは軽く溜息をつく。
見えていないのでどうするつもりなんだろうかと様子を伺っていたら、急に体が浮く感覚に襲われた。
抱えられてる?!
びっくりして目を開けると、そこには困惑と言うか、呆れていると言うか、なんとも表現しがたい表情をしたアーチャーの顔があった。
「やっとお目覚めかね?意識はあるようで何よりだ」
貧血でしゃべれるほど体力が無い私を見て、アーチャーは困惑と言うような顔をして私をベッドに寝かせた。
「何故呼ばなかった?」
続く