「答えは出たかね?方法が思い浮かばないのならば、私がやるが…」
「それは嫌よ。嫁入り前だって言うのに何であんたに着替えさせられないといけないのよ…」
こういう時に、ブラウニーとかそういったサーヴァントがいると楽なんだけど…
今更無いものをねだってもしょうがない。
「用意してくれれば自分でやるわ。不本意だけど、着替えを用意してくれるかしら?」
本当なら、コイツに下着とか触られたくないし、見られたくも無い。
でも自分で取って来れない以上は仕方ないのだ。
仕方ない、と思うより無い。
「着替えを用意するだけでいいのかね?着替えはどこでするのか?」
「お風場にお願い。ついでに体を拭くから」
起き上がるのに必要な腹筋は使えないけど、座った状態でならばそれなりに体を動かせる。
多少痛んでも根気強く着替えるしかない。
「風呂場だな。君を降ろしてから取りにいくとしよう」
私に言っているわけではない、独り言。
誰かに言っているように見せかけて、彼はいつもそうやって独り言を言う。
自己承認を取っているらしい。
「ところでアンタの魔力はどこから来てるの?」
「分からない。君からではないことは確かだがね」
本当に、気がついたら瓦礫の下にいた、ということなのだろう。
本人ですら死んだと思うような攻撃を受けて、それで生きていること自体信じられないことだけど…
「そう…でも生きていて良かったわ」
心の底から、そう思った。
令呪が消えたあの時から、私は後悔し続けていたから。
死ねと言ったのに等しい命令を、私はしたのだ。
「倒して期待に沿う事は出来なかったがね」
彼は後悔していると分かる、真剣な表情をしていた。
「何でアンタが後悔してるのよ?」
風呂場へと移動しながらも、私には揺れが伝わってこない。
揺れが伝われば私の傷に響くと分かっているからだろう。
いつも皮肉を言ったりする割りに私のことを優先して考えていてくれた。
「アンタが生きていて、私が生きていて、バーサーカーは倒してある。結果はちゃんと期待通りよ。なんか問題ある?」
結果オーライ。終わりよければ全てよし。まだ終わってないけど。
「ああ、そうだな」
私の言葉に調子が戻ったのか、いつも通りの表情で頷くアーチャー。
「では、次なる命令を遂行してこよう。少し待っていたまえ」
私を風呂場の壁に沿うように座らせて、彼は風呂場を出て行った。
本当ならこうしている間も彼らは戦っているのだろう。
何でか知らないけれど、士郎は怪我が勝手に治るからまあ…大丈夫だろう。
問題はセイバー。
どうあがいても魔力不足は否めないから、いい方法があればいいんだけど。
ま、あの二人どう考えても好き同士なんだから、どうにかしてるだろう。
そこまで考えて、私は肝心なことを忘れていることに気づいた。
「お待たせ、着替えを持ってきたぞ」
「ありがと、それより今日って何日?」
あれから、私はどれくらい眠っていた?
「生憎と日にちは分からないが、君を衛宮邸で見つけてから丸一日といったところかな」
一日…。
最悪、決着がついているかもしれないということか。
「こんなこと頼むのおかしいかも知れないけれど…柳洞寺に行って来てくれない?」
「柳洞寺?ああ、決戦の場所か。かまわんが…行くとは言わないだろうな?」
「どんな状況になっていても、行くとは言わないわ。行っても足手まといだもの」


続く