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5.リボン

それは、ちょっとした気まぐれだった。
私だって女の子だし、おしゃれくらいする。
何より家の中で過ごしているのだから今日くらいは…いいかななんて思ったのだ。
「凛…?」
朝食と紅茶を用意していたアーチャーは私の姿を見て言葉が止まる。
「なによ、私の顔に何かついてる?」
アーチャーがそういう反応をする理由は自分でもよく分かっている。
だが、それは自分から言うのではなく、気づいて欲しいと思う。
しばらくじっと見つめていたアーチャーに、ちょっとイライラしつつも何時も通りに椅子に腰掛け、紅茶を待つ。
じっと見ていた視線を紅茶に移し、黙々と手を動かすアーチャー。
いつもならどこか一つでも違えば言ってくるのに、今日のアーチャーは何も言わない。
すぐに指摘されると思っていたのに、指摘してもらえない…気づいていないわけじゃな無いんだろうけど、この状態で放置されるのは凄く腹が立つ。
ティーカップを私の前に運ぶアーチャーに、軽く睨んでみる。
殺気には敏感に反応するだろうと睨んでの行動。
すると、こいつはとんでもない顔をして私の睨みに答えてきた。
「よく似合っているな、そのリボン」
いつもは見せない笑顔と、言葉。
完全に皮肉な言葉で感想が返って来ると思っていたのに、その言葉と笑顔は…卑怯だ。
意表をつかれ過ぎて、呆然とする。
顔も赤くなってきたのが分かる。
こっちが照れているのが分かったら、きっと皮肉な笑顔を浮かべて何か言ってくるに決まっている。
「あ、ありがと。言葉は素直に受け取っておくわ」
慌てているとは思われないように視線を外し、紅茶を飲む。
横目でチラッと見るとすでにいつもの表情のアーチャーが、朝食を運んでいた。
なんだろう、今日はやけに口数が少ないような…?
不振がってちらちらとアーチャーの様子を観察する。
さらによく見ていると…
「私に何か言いたいことがあるのかね?」
「えっ?」
こちらには一度も視線を動かしていないはずなのに、アーチャーは私の行動を見ていたかのような疑問を口にした。
じろじろ見ていたはずではないのに、何故分かったんだろうか。
聞かれて驚いてうろたえてしまった。
「君は気づかないように見ていたつもりなんだろうが…幾たびの死線を潜り抜けてきた私には背中であってもそのくらいの視線は分かるものだ」
多分、私の声に反応しての答えなんだろう。
「だが…悪いものではないな」
意味不明の言葉。そして、一瞬見せた笑顔。
すぐにいつもの皮肉を言いそうな笑顔に変わってしまうけど、きっと…本心なんだろうと思う。
「私の視線が悪いわけないじゃない」
朝から滅多に見られないアーチャーの笑顔を見て、こっちはペースが崩されている。
まともに視線が合わせられない。
「何か用があるのはそっちじゃないの?今日は言葉数が少ない…」
と、そこまで言って気がついた。
「…遅くなったけど、おはようアーチャー」
「おはよう、凛」
もしかして…挨拶交わしていないから言葉数が少なかったのかな…?
「言いたいことがあるのか?なんて聞かないで、挨拶してないって言ってくれればいいのに」
運ばれた朝食を少し口に運びつつ、文句を言ってみる。
すると、からかうような笑みを浮かべて私を見るアーチャー。
「なに、君が気づいて欲しいと思ったように、私も気づいて欲しいと思っただけだ」
「!!」

続く