私の一言にアーチャーの眉間が動いた。
「君の姿を下から上まで見ていたのを、気づいていなかったようだな。私には彼らの会話まで把握できていたが」
アーチャーは珍しいくらい声に怒りを含ませていた。
「危ないと思えばガンド打ってでも何とかしたわよ」
私はアーチャーが何故そんなに怒っているのかが掴めずにいた。
落ち着いて話さないといけない気がして、近くのベンチに座ろうと移動する。
怒りを気配に含ませながらもついてくるアーチャー。
「注意力が散漫になってたのは認めるわ。だけど、あなたが何でそんなに怒るの?」
ベンチに到着して、私はアーチャーを振り返って聞いた。
「君が、どれほど危険を認識出来ていないのかというのもある」
アーチャーが私の前に進んできたので、私はベンチに座って見上げた。
「それ以上に…君は自分が他人にどう映っているのか認識していない方が問題だ」
聞いたのは私だけど、アーチャーの言葉は理解するのに時間が必要だった。
他人に映る自分。
ずっと優等生を演じてきたのだ、優等生に映っているに決まっている。
なのになんでそんなことを言うのだろう?
目の前に立ったアーチャーは圧力を伴って立っている。
怒り、いや…苛立ち?
「今の君は…誘っているようにしか、見えていないと言うことだ」
渋々といった表情で、アーチャーは口にした。
誘っているって、私が?
「何で?私、何かした?」
「だから、認識していないと言っているんだ。出てくるときに言っただろう?スカートの長さが問題だ、と」
さっきの会話を思い出してみる。
確かに、言ってる。
「スカートが短いと、誘ってるって言うの?」
そう注意したと言うことは、アーチャーにもそう見えているのだろうか?
「そう思われても仕方ないだろうな。夜道を歩くのだから、それ相応の服装の方が安全だろう」
「見えていたって…見る側の問題でしょう?」
私にはそんな意識は無い。
今までだってこの丈で生活してきたんだから、大丈夫だと思う。
「そんな悠長なことを言っているからさっきみたいなことになるんだ」
やはり、アーチャーはまだ怒っているようだった。
「でも…」
怒られる理由がつかめなくて、私はアーチャーを見上げる。
「なら…実際にそういう場面に出会わないと分からないだろうな」
言葉は軽快。でも、表情は真剣。
なんて芸当をやってのけるんだろうと思った、その刹那。
私を閉じ込めるように伸びてきた腕。
「な…なんの冗談?」
驚きで言葉が上手く出てこなかった。
「冗談ではない。認識できないマスター殿に実感していただくためだ」
実感って、何の?
アーチャーのからかうような、それでいて怒っているようにも見える表情に、ドキドキする。
「実感って…何する気?」
突然の行動に、私の頭はついて来れない。
確かにさっきの場面でパニックになっていたら危ないかもしれない。
「…それも無意識でやっているのなら余計質が悪いな」
やってるって、何を?
私はただ見上げているだけなのに。
「こんな状態になっても、君は危機感を抱かないのかね?」
アーチャーがそういった瞬間、私の視界は空を向いて…アーチャーを見上げていた。
「え?」
続く