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遠坂さんちの家庭の事情

5

アーチャーはいつもどおりに紅茶を淹れてきた。
今ある感情を全て隠して、混ぜることなくいつも通りの文句のつけようの無い紅茶を、だ。
出会った頃から思っていたけど、コイツは感情を隠すのが上手い。
普段は飄々としているのに、ちゃんとやることはやっている。
やっぱり殺したいほどの憎悪の対象が前にいてもその辺は変わらないんだな…
「凛、先ほどの召喚の説明を先にしてくれ」
「え?ああ、さっきのね。いいわよ」
ぴりぴりオーラが伝わってくるけれど、今すぐに息の根を止めるとかそういった短絡的な行動には出ないらしい。
よかった、見た目どおりに大人そうで。
「安心して。召喚は本当だけど、アレは害があるようなものじゃなかったわ」
「どういうことだ?」
私の言葉に訝しがるアーチャー。
今まで起きていた召喚が全て悪意のある召喚だったことを考えると、納得が行かないのは無理も無いと思う。
「召喚者は私のクラスの担任。勿論魔術師じゃないわ。で、サーヴァントは…先生の婚約者よ…」
最後の方は先ほどのあてられた雰囲気を思い出して嫌々な感じになってしまった。
クラスは分からないけれど、見たところそんなには強くない。
というか、悪いことしないといけないような気配が微塵も無かった。
「婚約者…?」
アーチャーも言葉が理解できず、困惑の表情を浮かべていた。
「間違いなくサーヴァントなの。でも、本人が妻だって言ったのよ」
出会って数秒で妻って言うのはどうかなとは思うけれど、目的がそうであるならば放っておいても害は無いだろう。
「そんなサーヴァントいるのか?」
「私が聞きたいくらいよ。アーチャーこそ聞いたこと無いの?」
「あるわけが無いだろう。あるのなら驚いたりはしない」
そりゃそうだ。
自分で言っといてなんだけど、それが普通だと思う。
ましてやアーチャーは戦闘をするために呼び出されたサーヴァント。
さっきのがなんであれ、妻になる為に召喚されるようなサーヴァントなど、知るわけが無いのだ。
「まあ、何かね…凛は放っておいても害はないと判断したわけかね?」
「そうよ。アレが演技で手口だって言うのならすぐに分かると思うしね」
そう、私が頷いた瞬間、空気が変わった。
変わったなんて優しいものではない、凍りつくような殺気。
「では…こちらの話に入らせてもらうとしよう」
言葉はいつも通り。
表情もいつも通り…というか、無に近い。
気配だけが危険な感じを伝えてくる。本気だ。
戦闘に特化したサーヴァントが本気で衛宮君を殺そうとしている。
「待ちなさい、アーチャー」
私は敢えてアーチャーを制止した。
「何かね?話はさっき終わったはずだが」
焦っているのか、それとも…
「紅茶を飲む時間くらい待ちなさいよ。私、まだ飲み終えていないもの。ね、衛宮君?」
今までの会話が魔術師としての会話だったため、言葉を挟むことなく彼はそこに座っていた。
今もちょっと固まり気味だ。
「え?ああ、…そうだな」
彼のカップもまた飲み干されてはいない。
「せっかく殺気を押し殺していつも通りの紅茶を淹れてくれたんだもの。ちゃんと飲まないと勿体無いわ」
何がそこまで衛宮君を殺そうと思わせているのか…私には正直分からない。
でも、過ちを犯すことぐらいは止めてやらないと。



続く