「良かったわ、アンタが見た目どおりの精神年齢でいてくれて。襲いかかったらどうしようかとヒヤヒヤしたわ」
「軽く愚弄されている気もするがそれは後で話し合おうか、凛」
うわ、いらないこと言っちゃったかな。
「んーまあ、私も色々と話があるし。いいわよ?」
問い詰めることなら私もあるからおあいこだろう。
「では、改めて話させてもらおうか」
自分の分の紅茶と、私達の分の紅茶を用意して席に着くアーチャー。
「まずは私のことから話す事にしよう。私はアーチャー。遠坂凛のサーヴァントだ」
「サーヴァント…?!」
アーチャーの言葉にぴんと来なさそうな表情の衛宮君。
「衛宮君、あなたも魔術師なら…その言葉くらいは知っているでしょう?」
「いや…俺は魔術師といえるほどのものじゃないし…チラッと聞いたくらいかな」
ん?衛宮といえば、まあ…ちょっと有名なんだけど…
「衛宮の魔術師は召喚とかには興味が無いの?」
家としてはちゃんとした魔術師の家系のはず。
それを彼が継承していないとは思えないんだけど…
「俺、親父と血が繋がってないんだ。だから魔術刻印とかは継承していないし…魔術自体、頼み込んで教えてもらったんだよ」
「そうなの?じゃあ、どのくらい魔術を使えるのか…聞いても差し支えは無い?」
「せいぜい強化…かな」
なるほど。彼の魔術師らしくない雰囲気はそういうことだったのか。
「話を続けるぞ。サーヴァント…まあ、使い魔とかそういったものと同じ意味合いの言葉ではあるが、私は少し違う」
まるで衛宮君の魔術師としての知識の程度を知っているかのような丁寧な説明。
まあ、馬鹿にしているのかもしれないけど…
「違うって、どこが?」
「まずは、本来のサーヴァントなら人型のサーヴァントを使役するのは魔法使いでも難しいってことかしら?」
「え?でもコイツ人型だろ?」
「アーチャーは特別なの。今、巷で起きている魔術師がらみの事件もだけどね」
「私は遠坂家に代々仕えているサーヴァントだ。この地に特別な魔術基盤を置いたときから仕えている」
「特別な魔術基盤?」
本当に素人同然なんだ、衛宮君て…
この地に住んでいる魔術師がそれを知らないはずが無いのだ。
「簡単に言うのならば聖杯だ。聞いたことぐらいあるだろう?」
「聖杯って、あの、キリストの血を受けたとか言う聖遺物か?」
「一般的な解釈ならね。魔術師の言う聖杯というのは願いをかなえる万能の魔力炉って言うところかしら?」
万能の釜とか言われている方がものは近いだろう。
私も見たことが無いのでそれがどんな形をしているのかは知らないんだけど。
ただ、それがとんでもない魔力を内包しているのは分かる。
こんな規格外なサーヴァントをこの世に繋ぎとめてしまうのだから。
「その聖杯の魔力補助を受けて私はここに現界している。実際に活動する魔力は凛から受けているから、マスターは凛だがね」
ここまで何も見えないほどの無表情で話しているアーチャー。
衛宮君相手だと、無表情か憎悪の雰囲気か…そのどちらかしか表す気が無いらしい。
って、二人をこうやって眺めていると、あることに気づく。
「似てる、気がする…」
目の色だって、肌の色だって、髪の色だって…似ている要素は無いはずだけれど。
それでも、似ていると思ってしまったのだ。
びくりと動いたのはアーチャー。
「なにを言うかと思えば…君の目は節穴かね?」
言われるのはごもっとも。
嫌っている相手に似ているといわれて嬉しい人はいないと思う。
「私が使役しているのは…アーチャーも含めて、聖杯に呼ばれるサーヴァントはね、みんな規格外なのよ」
「規格外?」
「そう。だって、彼らはみんな伝説上に名を残す英雄なんだから」


続く