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遠坂さんちの家庭の事情

6

衛宮君が帰った後、言葉を交わすことも無く私たちは夕食の準備に取り掛かった。
黙々と作られていく食事。
一人で暮らすようになってからそれなりに調理が出来るようにはなっているけど…
それにしたってアーチャーの手際のよさとスピードはいかがなものだろうか。
下手するとそこらへんの主婦よりも早いのではないだろうか?
父さんがそういったことを命じるとは思えないし、彼はどこでこんな技能を身に着けたんだろうか。
「何かね、凛。言いたいことがあるならば言いたまえ」
さすがに私の視線を浴び続けることに耐えかねたのか、
アーチャーが振り向かずに言った。
アーチャーが作る係、私はテーブルのセッティングをしている。
よって、私の視線は彼の背中に集中するのだが。
「やっぱり気づいていたのね」
「このくらいの視線に気づかずにいるならばサーヴァントとしては致命的だからな」
殺気じゃなくてもこれくらいは分かる、と付けてして肩を窄める。
多分苦笑したのだろう。
「別に侮ってるとかそういうんじゃないけど…ちらちらとしか見てないのに分かるとは思わなかったのよ」
じっと見ていたのならば、気づくとは思った。
でも私が彼の背中を見たのは衛宮君が帰って彼が台所に立ってから片手ほども無い。
この一時間弱に数回。
その視線の意味を正確に理解しているのだから、さすがと言うべきだろうか。
「言いたいことって言うか、あなたは食事を一緒にとるの?」
「君が望むのであれば応えよう。だが、そうでないのならば…」
「屋根の上に戻る?」
アーチャーだからなのか、彼は好んで家の屋根の上にいた。
遠坂の屋敷はちょっとした丘の上にある。
元々が高い場所なだけにその眺めは格別だろう。
景色を楽しんでいるとは思えないけど。
「ああ。それで君はなんと言うのかね?」
「話があるから一緒に食事をしなさい。いいわね?」
聞くことは山のようにある。
その為には屋根の上に逃げられてはたまらない。
「承知した。ではテーブルに食事を運ぼう」
いつもなら無理矢理食事を取るのに、今日は素直に応じる。
「あなたにも…話があるみたいね」
衛宮君と一緒にいたことだろうか?
それともさっきの発言だろうか?
外見と精神年齢が比例していて良かったとか言ったし。
「まあ、それもあるな。だがそれよりも…」
用意を終えて席に着いたアーチャーが私を見つめた。
「君の側にいるのは私でありたいからな…。小僧に後れを取るわけにはいくまい?」
なっ…
私は思わずアーチャーの顔を見つめたまま絶句した。
どうしてそういう台詞をサラっと言うんだろうか、このサーヴァント。
「どうした、凛?」
「なっ…なんでもないわよ。こっちは聞くことも問いただすことも山のようにあるんだから、
覚悟しなさいよね」
目の間に並んだアーチャーお手製の和食の数々に、視線を移す。
そうしなければ動揺を悟られると思ったから。
コイツ、人をからかうところがあるから。
「お手柔らかに頼む」
器用に箸を持ち、胸の前で手を合わせる。
『いただきます』
二人で声を合わせて、騒がしい夕食が始まった。

続く