ふと浮かぶ一人の人物。
「ねえランサー、そいつの髪の毛って、ワカメみたいだった?」
「ああ、そういう感じだったぜ。いい喩えするな、嬢ちゃん」
ということはやっぱり。
「凛、心当たりがあるのか?」
「有るか無いかでいうのなら、有るって答えるわね」
出来れば関わりあいたくは無いんだけど…
アイツ、私が自分に惚れてるみたいに思ってたことあるし。
「でも…例えアイツだとしても、アイツにはサーヴァントを従わせるだけの魔力も無ければあんな結界を張るだけの知識も無いはずよ」
魔術回路はないはずだ。あるならあの時にあんなことは起こらなかったのだから。
「ま、嬢ちゃんに心当たりがあるなら当たってみるだけじゃねえのか?」
「そりゃそうだけど」
アイツに会うって事は、桜に迷惑かけちゃうなぁ…

翌日。
一緒に学校に行くと主張したランサーを留守番させ、学校へ向かう。
確かあいつのクラスは衛宮君のクラスだったはず。
背後の険呑な雰囲気に気が重くなりつつも教室を覗く。
そこに、アイツの姿は無かった。
「仕方ない、桜に聞くか…」
最悪の状況だった。
養子に行ったとはいえ可愛い妹。
巻き込む気は無かったのだが…
トボトボと一年の教室へ向かう私。
その私を呼び止める声が、前から聞えた。
「どこに行くんだ、遠坂」
スパナ持って立つ姿はよく似合っているというか…
「一年の教室よ。そういう衛宮君は教室に帰るの?」
「一年…もしかして桜のところか?」
「よく分かったわね。私、桜と仲良いって言ったかしら?」
「なんとなくかな。時々楽しそうに話してるだろ?」
衛宮君の後ろから会長が来るのを確認し、急ぐからと告げてその場を離れた。
それに…あれ以上側にいるとう後ろのサーヴァントが何かをしかねない気がするのだ。
殺気が半端じゃなかった。
衛宮君もそれを感じていたんだと思う…だって、冷や汗かいてたし。
チャイムが鳴ったら戻らなくてはならない。
急ぎ足で階段を下りて教室へ向かう。
教室の前で目当ての姿を発見し、声をかけた。
「桜!」
こちらを振り返って驚く桜。
「どうしたんですか、遠坂先輩?」
二人きりなら姉さんと呼んでくれるが、学校では先輩で通している。
長男がいる家に養子に行くという世間一般では理解不能な状態のため、隠しているのだ。
それに。
そう呼ぶことでアイツと私が結婚を約束をしてるとか噂立てられたらたまらないし。
「ちょっと聞きたくてね…慎二のやつ、今日は休み?」
「え、あ、はい。声をかけたんですけど反応が無くて…家にいるとは思うんですけど」
問いの内容が意外だったのか、驚きながらも答える桜。
「そう…ねえ桜、あなた今日も衛宮君の家に行くんでしょう?出来る限り帰るの遅くするか、泊めてもらってくれない?」
最悪の状態を考えて、口にした言葉は…
「なっ、何考えてるんですか、先輩?!」
桜の叫びによってかき消された。
「やっぱり、とっぴ過ぎたかしら?でもあなたたち付き合ってるんでしょ?」
「い、いえ、付き合ってなんて…」


続く