そのことには色々思うところがあるのか、声が徐々に小さくなっていく桜。
「まあ、泊まらなくても帰りは遅めでお願い。慎二に話があるから」
「はい、分かりました。出来るだけ先輩の家にいるようにします」
顔を少し赤らめて、それでも私が何をしたいのかが分かったらしい桜は頷いてくれた。
「あの、そのことで話があるので昼休み、お昼ご飯ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「何か…知っているのね?」
赤面しつつも真剣な表情で聞いた桜に、私も頷いた。
そこで予鈴が鳴ったので私は教室に帰ろうと桜にまたね、と手を振った。
桜は振り替えすと教室に入っていった。
学校が終わったら。
昨日の惨劇の続きが行われる。
それに対する対策も考えないと…
いくら好きじゃないからといって、一般人なら見殺しにするのは気分的によくない。
私は午前中一杯掛けてその方法を考えることにしたのだった。

考えていると時間の流れは速いものである。
桜と約束をした昼休み。
久しぶりに姉妹揃って昼食を取る。
「姉さん今日はサンドイッチですか?」
「持たされたのよ。コレなら食べるだろうって」
「ああ、アーチャーさん、姉さんの好みを完全に把握してますからね」
待ち合わせて最初の会話は他愛の無いもの。
いきなりヘビーな会話から入るなんて、せっかくの姉妹水入らずの時間がもったいないというものである。
「そういえば、どうして兄さんに用があるんですか?」
それはするっと違和感無く切り出された言葉だった。
「んー、実は数日前学校で謎のサーヴァントと出くわしちゃって、仕方なく応戦したんだけど…」
謎のサーヴァントが家にいることを伏せて、私は話せる限り話した。
「つまり、その目撃者が兄さんではないかということなんですね?」
我が妹ながら理解が早くて助かる。
「そう。それで確かめたいのよ。あの場にいたのかどうか」
「それで姉さん、その場にいたとして…兄さんはどうなるんですか?」
「サーヴァントから逃げたんだもの、それ相応の何かがあったんでしょうけど…それによるかしらね」
私の答えに考え込む桜。
と、突然頭を下げてごめんなさい、と言った。
「どうしたの、桜?」
「兄さんを助けたの、多分私が呼び出してしまったサーヴァントなんです!」
一瞬、意味が理解できなかった。
「呼んだって、サーヴァントを?桜が?」
申し訳なさそうに頷く桜。
「私にはその気が無かったんですけど、間桐にもサーヴァントがいるんだと父さんに言われて…仕方なく」
「何ですって?桜が呼んだとしても間桐のサーヴァントにはならないでしょうに」
前々から魔術の家系としてのプライドをやたらと維持したがる人たちだったけど…
それにしたって、桜にその責を負わせるとは。
「それならそれ相応の覚悟を持ってもらわないとね」
いかに養子としての籍を残したままにしていても、現在は間桐の魔術を継承した魔術師ではないのだ。
新生間桐の魔術師。
今までの地に落ちたとしか思えない魔術ではなく、始めのころに立ち戻った正しい魔術を継承する。
それが、あの時の私との契約だったはずだ。
外れたことを一つでもやったなら、即刻桜は遠坂に戻す。
サーヴァントの召喚は契約違反だ。
慎二が召喚したのならともかく、召喚したのは桜。
「…姉さん、怖い顔してますが…」
「そう?まあ、今日の襲撃は確定ってとこかしら。桜、あなたのサーヴァントも衛宮君ちに連れて行ってね」
「あ、それが…兄さんに権利を渡しているんです」
「あなたのサーヴァントは令呪が無ければ危険なの?」


続く