「いえ…ライダーは令呪など無くても守るって言ってくれます」
「なら問題は無いわ。ついてきて欲しいと言えば来てくれるわよ」
ライダー、それが召喚したサーヴァントのクラスか。
それならランサーが見えないほどの速さで消えてしまっても納得がいく。
「そんなわけだから、夜はそのつもりでお願いね」
「はい、分かりました」
かくして、姉妹の内緒話は終わった。
あとは放課後を待って行動するのみ。
上手くいけばいいけど…

アーチャーにはレイラインで話の内容を告げておいた。
呼べばランサーと共にいつでも動けるようにしておく言っていた。
夕焼けに染まる教室。
桜が部活を終えるまでも少し。
せめて、衛宮君の家に着くまでは行動を隠しておきたい。
その判断が、いつもとは違う展開を呼ぶとは私は知らなかったのだ。

行動開始の時間が来た。
私はアーチャーに合図を送り、間桐邸に向かった。
今頃は桜も衛宮君ちについているはず。
巻き込むことは無い。
だけど、何かが引っかかる。
なにか…ここ一番の大ポカをやらかいているかのような、予感。
それが何なのか分からないまま間桐邸に到着し、やっとそのことに思い当たった。
「あっちゃー…誰もいないわ」
そう。
私は失念していたのだ、慎二が出歩く可能性を。
これじゃあどこに行ったか分からない。
こうなったら一旦家に戻って衛宮君ちに電話して、桜に聞いてみるしかない。
家に戻ると、アーチャーが不可解なものを見るかのような目で迎えてくれた。
「間桐の家に行ったのではなかったのかね?」
「留守だったのよ。これから桜に電話で聞いてみるわ」
「ふむ、そうか」
桜に電話、と言うのが引っかかったのだろう。
「君の妹は家にいないのかね?」
「今頃衛宮君の家で晩御飯作ってると思うわ」
ぴくっと眉が動いた気がするが、無視する。
「では電話するのは小僧の家か?」
「ええ。それしかないでしょう?」
私はそういいながら電話をかけて相手が出るのを待つ。
『はい、衛宮です』
出たのは衛宮君。
まあ、当然と言えば当然か。
「こんばんは、衛宮君。私だけど」
『え?遠坂?!どうしたんだよ、電話なんて』
突然の事態に驚く衛宮君。
まあ、桜と姉妹だって知らないんだから仕方ないんだけど。
「ちょっと桜に用があってね。代わってくれる?」
『ああ、分かった。ちょっと待っててくれ』
そう言うと衛宮君が電話を離れて走っていく足音が聞えた。
と、そこに響いてきた玄関の扉が開いたと思われる音。
そして。


続く