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遠坂さんちの家庭の事情

12

教会からの坂道を下り、橋を渡る。
目的地は衛宮君の家だから、分かれ道でも別れることは無い。
十字路のカーブミラーに映るのは私と衛宮君だけ。
顔を合わせていると喧嘩しそうなアーチャーは、姿を見せていることを止めて霊体で後ろについてきている。
と、前から走ってきたのはセイバー。
結構話していたから遅くなったんだけど、それと同じくらい彼女はご飯を食べ続けていたのだろうか…?
駆け寄ってきた彼女と合流し、三人の状態から開放されて安堵する…はずだった。
鈴を転がすような少女の声が聞えたのは、私が気を抜いたのと同時。
「もう帰っちゃうの?これからだよ?」
背後に迫る、強大な死の影。
声の主もさることながら、その後ろに控える何かもまた強大。
「こんなところで何してるんだ?小さい女の子が一人なんて危ないぞ」
能天気に話しかけてる衛宮君。
少女の目は衛宮君から離れない。
一層笑みを深くして喜ぶ少女。
「優しいんだね、お兄ちゃん。だけど、心配しなくてもいいよ?だって、これから死ぬのはお兄ちゃんなんだから」
赤い瞳が揺れる。
銀の髪と赤い瞳。
小学生にも見えるその少女から放たれる殺気に、衛宮君も気づいた。
「自己紹介、まだしてなかったよね。これで最後だろうから教えてあげる。
私はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。バーサーカーのマスターだよ」
貴族の令嬢がするようにスカートの裾を持ち、挨拶をする少女。
その名前に聞き覚えがあった。
「そういったら、分かるよね?」
それは私に向けられた言葉。
「ええ。でもまさかこんな小さなマスターが来るとは思わなかったわ」
アインツベルンはこの街の聖杯戦争が始まってから、一度も出なかったことが無い魔術師の家系。
得意分野が錬金術のそれに近いから、戦闘は不得意だと聞いていたけど…
「バーサーカーのマスター?小さな女の子が?」
驚きを隠せずにいる衛宮君は、まだ戦闘の用意が出来ていない。
「残念だけど、お兄ちゃん殺してあげるね。ばいばい」
本当に心の底から楽しいと、目が笑っている。
殺意が潜む瞳の奥は純粋な喜びが見えていた。
天使のような悪魔とはよく言ったものだ。
目の前の少女がそれ以外の何者にも見えない。
準備すらで来ていない衛宮君を庇うように立つセイバー。
戦闘になると読んで、アーチャーは狙撃しやすい場所に移動している。
はっきり言って、歩が悪い。
アレはどう見ても規格外。
バーサーカーを維持してなおかつ完全に制御できているイリヤスフィールの魔力もそうだけど、あのバーサーカーはまずい。
何が元かなんて知らないけれど、無名な英霊ではないだろう。
「やっちゃえ、バーサーカー!」
主人の声に呼応するように前に出てくる巨大な体。
優に二メートルは超えているであろうその体は、全体から殺気を放っていた。
「衛宮君、来るわよ」
明確なまでの殺意と死の影に気づいたのか、衛宮君は動けずにいる。
「セイバーなら大丈夫よ。下がらないとセイバーの邪魔になるわ」


続く