あっさりと引くアーチャー。
「で、私の部屋で起きるかもしれない異常って何?」
本当はなんとなく言いたいことは分かっているんだけど、聞いてみる。
いつもからかわれているから、やり返してみたかったのだ。
「それを聞いてどうする?凛」
話を逸らそうと、問い返してくるアーチャー。
「気を付けるだけよ?それが有り得そうだと判断したならね」
私の言い分がもっともだったので、黙るアーチャー。
「まあ、衛宮君が私を襲うことは無いと思うけど?」
そろそろ朝食の準備が終わりそうなので、話を終えようとアーチャーの言いたいことを告げた。
「む」
短く唸るアーチャー。
私が衛宮君を気に入っているのが気に食わないんだろう。
信用しているのだというような事を言えば、彼はいつでも苦い顔をするのだ。
「私の見立てなら、彼は桜が好きだと思うわ。確信よ」
今朝の行動と、昨日の行動。
衛宮君は絶対、無自覚に桜を好きだと思う。
じゃないと、あそこまで普通には接することが出来ないだろうし。
アーチャーは私の言葉に考え込んで黙る。
「だが、ヤツは君に憧れていたはずだ…。エミヤシロウは憧れていたのだからな」
遠い場所を見つめるような瞳で、アーチャーが呟く。
「憧れって言うのは誰でも持つものよ。実際に好きになるかは別だわ」
現に、私がそうだから。
衛宮君には憧れてる、今でも。
でも、だからといって好きなわけではない。
人間として、からかう相手としては好きだけど。
「ああ…普通ならばな」
私の言葉に眼を瞑って答えるアーチャー。
何を思っているのかは分からないけれど、それは聞けなかった。
生前の記憶を辿っているのかもしれないし…その辺は分からないけど。
「遠坂、朝飯できたぞー」
後ろから、のんきな声が聞える。
「ありがと。今行くわ」
私は振り向いて衛宮君に笑顔を見せた。
衛宮君はおう、と短く返事するとアーチャーを見た。
衛宮君の視線に気づくアーチャー。
「見張りに戻るよ、凛」
視線をスルーして、私の頭を撫でる。
衛宮君が露骨に怒っているように見えるのは気のせいだろうか?
それを見て、余裕の笑みを浮かべるアーチャー。
よく分からないけれど、ヒトをだしにしてからかうのはやめてほしい…

続く