朝食の後、私たちは今後をどうするのかを話し合った。
セイバーは呼ばれた以上は聖杯を手に入れるべく戦うと宣言したのだが、聖杯の状態を話すと私達の意見に賛同してくれた。
衛宮君は多くの人が犠牲になるかもしれないのなら協力をすると言ってくれた。
桜とライダーは基本的に協力的なので、聞かずもがなと言う所。
当面は私が動いて、手に負えない状態になりそうならば二人に助けてもらうことになった。
「凛は若いですが、しっかりとした人なのですね」
「ありがとう、セイバー。まあ、小さい頃からそうなることが決まっていたから、心の準備は出来ていたけどね」
管理している土地で何かが起きれば…それも、魔術が関わることならば、遠坂の責任は免れない。
いわゆる管理不行き届きなのだから、管理者が罰せられるのは当然なのだ。
「遠坂の魔術師になるって事は、そういうことも込みだからね…」
思わぬ形で間桐の魔術師になった桜も、大変なんだけど。
色々考えつつ、ふと思った。
セイバーとライダーって…性格あわなさそう…
「姉さん、具体的にはこれからどうするんですか?」
「んー、そうね…強力な魔力を柳洞寺から感じるから、そっちを調べるわ。きっとサーヴァントがいると思うから」
アーチャーに調べてもらったら、昏倒事件の黒幕は柳洞寺辺りに陣取っているとの事だった。
現状では一番気になる相手だ。
イリヤスフィールに関しては気にしていない。
どうも衛宮君を狙っている節があるから、それ以外の人に関しては心配ないだろう。
それから…
「なあ遠坂」
今まで静かに聴いていた衛宮君が手を控えめに上げて発言する。
「なに、衛宮君?気になることでもあった?」
「気になるって言うか…ランサーって、結局マスター誰だったんだ?」
「さあ…私にもそれは分からないわ」
聞いてもランサーは答えないだろう。
それよりも綺礼に会う直前に姿を消したほうが気になるけど。
もしかして綺礼と面識でもあるのかしら?
だとしたら、律儀にマスター申請しに行くような人がマスターなんだろうけど…
「まあ、ランサーについては追々考えるわ。今日の夜は柳洞寺に行くから。二人はいつも通りの生活していていいわよ」
さすがに今日は家に帰るから、夕飯はいらないと付け足す。
桜がいれば、いかにマスターとしての心得が無い衛宮君でも心配は無いだろう。
集まりすぎていても、狙われるだろうし。
そんなわけで、昼になるまでそんな話をし、昼ご飯をご馳走になってから家に戻った。
実はセイバーが昨夜の夕飯を五人前近く食べていた事や、ライダーが身長を気にしていることなど、楽しい話も聞けた。
セイバーは霊体になれないと言うので、私の服でよければあげるわ、と話したら是非とのことだったので、探しに帰ってきたのだ。
「んーと…」
私室のクローゼットを開いて、服を探す。
確か、この辺にあるはずなんだけど…
目的の服が見つからず、ちょっと焦っていると…
「凛、君が探している服ならその引き出しの奥だぞ」
なんて、私よりも私の物に詳しいヤツが現れるんだよね…
「何で知ってるのよ?」
「この間丁度片付けた。同じ服が何着も出てきて驚いたぞ」
「仕方ないじゃない、綺礼が同じのしかくれないんだもの。選ぶのが面倒なのか、こういう服が好きなのかのどっちかよね」
出てきた同じ服は、全て綺礼がプレゼントしてくれたものだ。
始めこそ着ていたけれど、最近は全く着ない。
好みのデザインじゃないし。
「確かに。君がこれを着ていたら、驚くだろうな」
私が今、着ているところを想像したらしいアーチャーは珍しく穏やかな笑みを浮かべている。
私の好きな色は赤。
だけど、綺礼のくれる服は青。
そんなわけで、着なくなったのだ。


続く