あの後、セイバーに服を持って行って今は夜。
夕飯は手早く済ませて、出掛ける準備をする。
柳洞寺の調査をするのだから、少し準備をしておかないと。
しかし、柳洞寺にサーヴァントがいるって言うのは、どういう事なんだろうか?
会長がマスターとか…考えられないんだけど。
「凛、電話のようだが」
「うん、今出る。取ってくれても構わないわよ?」
軽くシャワーを浴びていたので、すぐに電話に出られる状態ではない。
それに…うちには子機なんてないし。
たとえアーチャーが電話に出ても、困ることはないだろう。
こんな時間に電話してくるあてなんて、二箇所かそこら。
綺礼か桜だと思う。
素早くタオルで体を拭いて、服を着る。
髪は電話の後に乾かせばいいので、そのまま出る。
「アーチャー、電話誰から?」
髪を拭きつつ、居間で電話を受けているアーチャーに問う。
「間桐桜からだ。混乱しているようで内容が掴めん」
混乱?
「かして。嫌な予感がするわ」
素早くアーチャーから受話器を受け取ると、混乱している桜の言葉に耳を傾けた。
「桜?私よ、落ち着いて。衛宮君がどうしたの?」
電話の向こうの桜は半分動揺して、半分混乱しているらしい。
聞き取れた事柄を組み立てて、合っているかどうか聞いていくうちに、とんでもないことが分かった。
「つまり、衛宮君が柳洞寺のサーヴァントに体を乗っ取られたかなんかで出て行ったわけね?それをセイバーが一人で追いかけた」
電話の向こうの桜はそうです、と呼吸を整えながら頷いた。
内容はかなり切迫している。
「私もすぐ向かうわ。だから落ち着いて待っていなさい。連れて帰るから」
側にいるであろうライダーが、現界しているのだろう。
桜に向かって声をかけているのが分かった。
「じゃあね、桜はお茶でも飲んで、ドンと構えてなさい」
相変わらず衛宮君が絡むと動揺しまくるんだから。
まあ、それも仕方ないか。
電話を切って、後ろに控えていたアーチャーを見る。
面白くないのか、憮然とした表情をしているように見えた。
「聞こえていた通りよ。衛宮君が捕らえられて、セイバーも向かったわ。私たちも向かうけど異存はないわね?」
「もとより向かうべき場所だ。行くことには異存はない」
「それは、衛宮君のことはセイバーに任せておけばいいってこと?」
アーチャーの言葉を読んで、聞き返す。
「そうだ。もとよりヤツの身を案ずる必要は君にはないだろう?セイバーがいるのならば問題あるまい」
髪を拭きつつ、アーチャーの言い分を聞く。
だけど。
「どうにもならない状態なら助けるわ。物凄く嫌な予感がするの」
きっぱりと告げた。
「言い出したら君は聞かないからな。それより、凛」
「なによ?」
真剣な表情をしたアーチャーが、じっと見つめてくる。
思わず後ずさりする私。
「すぐ出るのは結構だが、髪くらいは乾かしてきたまえ」
それは、真面目は表情で言うことなの…?



続く