だが、それにはマスターである士郎の許しがいる。
どうしたものか。
途方に暮れていると…アサシンが剣を引いて戦いを中断した。
「どうしたアサシン。何故剣を引く?」
「満足な戦いが出来ぬと見えるが…折角の好敵手。今宵はここで止めよう」
「何が言いたい?」
表情を崩さぬままにアサシンは背を向けて門へと向かう。
アサシンの真意が掴めないセイバーは戸惑った。
「なあに、改めようといったのだ。今宵では実力を発揮できぬのであろう?ならば次回、発揮できるときに決着を付けよう」
マスターの許可を取ることができず、実力を発揮しきれないセイバー。
かたやアサシンは山門にいる限りは全力を出すことが出来る状態。
風流なものを愛でるサーヴァントはその状態を良しとしなかった、それだけだった。
それを全て理解したわけではない。
だが、気持ちは確かに通じた。
「いずれ、必ず」
セイバーの返答に一層笑みを深めると、アサシンは山門の暗闇に解けるように消えた。
気配を察して駆けてくる三人。
「セイバー、倒したの?」
「いえ、仕切りなおしで後日再戦です」
剣をしまい、武装を解いたセイバーは苦笑して凛の言葉に答えた。
「うわ、本当に伊達男なんだ」
アサシンの正体を知っている凛は天然記念物を見たかのような驚き顔をする。
士郎とアーチャーはその言葉の意味が掴めず、困惑の表情を浮かべていた。
「ま、いいわ。帰りましょう、桜が心配してるわよ」
凛の言葉にそれぞれ頷き、四人は山門を後にして衛宮邸を目指して帰途に着いた。
後日、キャスターの現界の問題について話し合うために、凛が柳洞寺に出向いたのは言うまでも無いことである。
境内で一成と鉢合わせした凛は、とうとう女狐が化けて出たと言われ、その数倍の毒舌で撃沈してきたと言う。
合掌。

続く