遠坂さんちの家庭の事情

15

所変わって、某教会。
自室にこもる神父と、ただならぬ雰囲気の青年が向かい合って座っていた。
神父の一言に青年の表情が変わる。
「それは本当か、コトミネ?」
その表情は愉快だと言わんばかりに笑みがあふれている。
だが、どこか歪んでいる。
「間違いない。ランサーが出会ったのは不可視の剣を操る剣のサーヴァントだった」
前回にも出会っている二人は、それが前回のセイバーであると直感した。
それゆえの嗤い。
一人は 真名を知っているが故の笑み。
もう一人は、己のものが戻ってきた故の笑み。
「ならば今度こそ迎えに行かねばならぬ。あれは我のものだからな」
見るものの背筋が寒くなるような笑みを浮かべて、青年は立ち上がった。
「どこへ行く?」
「セイバーのところよ。それ以外に我の目的は一つであろう?」
すぐにでもセイバーの所へ向かいそうな青年に待ったをかけたのは神父。
「何故止める?」
「ランサーの話ではセイバーはまだ柳洞寺で戦闘中だ。あの場所には他に三騎のサーヴァントがいる。少々厄介な場所だと思うが」
「そうだな…雑魚どもに関わるのも煩わしい。ならばセイバーが戻るまで待つか」
再び座りなおす青年。
と、そこに。
「コトミネ、買って来たぞ」
現れたのはランサー。
手には買い物袋が一つ。
服装もその辺の青年になっている。
「ああ、ご苦労だったなランサー」
「偵察はともかく、これはあまりやりたくねーぞ」
買い物袋を手渡して、ランサーはいつもの格好に戻る。
「なに、今回限りだ。家族がいれば家族に任せるのだろうが、生憎と独り身でな」
中身を確認しつつ部屋を出る神父。
「アンタに娘でもいた日にゃ、驚いて声も出ないだろうよ」
「む?娘なら一人いるが?」
からかったつもりのランサーは、思わぬ神父のカウンターに沈没した。
「な、まじかよ…?!」
ランサーの顔には想像できないと書かれていた。
「生まれてからほとんど顔を合わせていない娘だがな。どこかで暮らしているだろう」
神父の言葉に、驚きつつもどこか安心するランサー。
「そ、そうだよな…甲斐甲斐しく娘の世話するアンタなんて想像つかないからな」
そこまで言って、ランサーはあることに気づいた。
「ちょ、待てコトミネ…あんた、娘ってことは…嫁がいたのか?!」
「ああ。すぐに死に別れたが、いたのは確かだな」
まるで他人事のような遠い眼をする神父。
その手には豆腐。
会話をしつつ台所までついてきたランサーだったが、これから作るものには嫌な思い出があるのか、話を切り上げて退散しようと考えていた。
「そうか…まあなんだ、アンタも色々あったんだな」
だからこれ以上は聞かない…と言うようなニュアンスで立ち去る体制に入る。
「人並みにはな。聞きたいのなら話すが?作り終える頃には終わるだろう」
「いや。また今度にしておく。柳洞寺の件も気になるからな」
「そうか?残念だな。ランサーお前も食べるか?」
豆腐を切り出し、ねぎを切り、鍋を熱した神父が問う。
「いい!すぐに偵察に出るから遠慮する!」
ランサーは全力で断って、偵察に出た。
それから三時間後にランサーからの報告で衛宮邸に青年が現れるのだが、これはまた次回。

お笑いっぽいですが…こんなのもたまにはいいですかね?

続く