「オマエが、時臣の娘か」
それは予想外の言葉だった。
何でコイツが父さんの名前知ってるの?とか、思ってしまった。
「凛、アーチャーは…えっと、あのサーヴァントは前回のサーヴァントなんです」
振り向いたセイバーは、私のアーチャーに気を使うように言い換えて、説明をしてくれる。
前回のサーヴァント。
「つまりアンタは父さんと面識があるわけね?」
前回から残っていたサーヴァントなら、例外として存在していてもおかしくは無い。
それ自体がありえないんだけど。
「ああ。それなりにな」
「それなりって何よ」
「あのサーヴァントは…コトミネのサーヴァントでした。ですが…」
「綺礼の?」
まて。それじゃあアイツは今でも…?!
「そんな事はどうでも良かろう、セイバー。我は我の意思でここに留まっている。マスターなどというものはどうでもいいものだ」
「セイバー、何か気になることがあるの?」
今だ塀の上の金ピカは、私を見て楽しそうに笑っている。
品定めにも似た、暗い笑み。
「実は…コトミネのサーヴァントは…アサシンだと思っていたのです」
思っていた?
歯切れの悪いセイバーの言葉。
そこで、ふと有る答えが浮かんできた。
「待って。あの父さんがそうそう簡単にやられるとは思えないわ。という事は」
「なかなかに頭が回るようだな。その通りだ小娘。時臣はコトミネに裏切られ殺された」
やっぱり。
ずっと疑問に思っていたのだ。
綺礼が生き残って父さんが敗れたのは何故なのか、と。
綺礼に私は言ったのだ、父さんを守れと。
でも父さんは戻らず、綺礼は生きて帰ってきた。
父さんの勝利の為にいたはずの男が生きて帰ってきたのその理由が分からなかった。
けど。
「綺礼は…途中から聖杯が欲しくなったのね」
「さてな。だが、時臣と同じものを求めていたわけではなかろう。聖杯に選ばれたのだからな」
これですっきりした。
「初めて会った時から、気に入らなかったんだけど。これで兄弟子だからとか言う遠慮は要らないわね」
「姉さんはそれでいいんですか?」
「いいも何も無いでしょう。聖杯戦争なんだから、父さんだって殺される事なんて覚悟の上よ。綺礼にやられると考えていなかったのは父さんの甘さよ」
あの金ピカが言ったように、聖杯に選ばれたのならそれなりに欲する理由があっての事。
当人が気づいていなくても理由はあったのだろう。
「で、アンタ。どこの英霊よ?アーチャーが二人じゃやりにくくてしょうがないわ」
「我か?我は英雄王だ。そこのフェイカーとは一緒にするな」
英雄王?で、金ピカ?
思い描いたのは某ゲーム。
小学校の時に教室で誰かがそんなゲームの主人公を話していたなーと思い出した。
「ああ、塔を登る…ドルアーガ…だっけ?」
「ドルアーガの塔ではない!!ギルガメッシュだ!」
「あ、そうそうそれそれ」
何でそんな事知ってんの、英雄王。
「コトミネが持っていたのだ…やるべきではなかった…」
本気で悔しそうな英雄王。
「で、ギルガメッシュ。今日は引くの?」
「く…っ」
よく分からないけれど、悔しそうなところを見ると引いてくれそうだ。
性格はともかく、英霊としては破格の存在。
本気の勝負になったら勝ち目は無い。
ダメージ適度に与えておいて帰ってもらうのが一番いい。
ばつが悪いのか、虚しい強がりを残して去っていく英雄王。
本当に金ピカなんだな…
で、アイツは何しに来たんだ?
セイバーに求婚?
嵐のように登場し、嵐のように去っていく。
残ったのはセイバーの嫌悪と私の頭はアレな金ピカと桜の憎悪だけ。
次にあったら多分、慢心から倒されてそうだな…と思った。
アーチャーがフェイカーと呼ばれた理由が気になるけど、それはそのうち分かるだろう。


続く