夕飯が終わって、それでも微妙な雰囲気は消えなかった。
予想通りというか、全く話が進む事はなく…
桜はどうしてそんな雰囲気なのか分からず、ライダーにこっそり聞いたりしている。
問われたライダーだって困るだろうに…。
無意識の二人にはそういう雰囲気というのは分からないのだろうか?
まあ、衛宮君の対抗意識が完全にアーチャーに対するものだという事には気づいてるからいいんだけど。
これで桜が、衛宮君が私を好きだとか勘違いしていたら目も当てられない事になっていたところだしね。
アーチャーの焼きもち云々は聞かなかったことにしておこう。
焼きもちというよりは…保護者なわけだし。
さて、と。
「衛宮君、桜。私帰るわ」
食後のお茶も終わったし、これ以上いても話は進まないだろうし。
「もう帰っちゃうんですか、姉さん」
「ええ。学校の準備もあるしね…。桜、出来る限りでいいから、衛宮君の事、みててね。イリヤスフィールがこのまま放って置くとは思えないから」
「はい。先輩が襲われない様に見てますね」
本人が気をつけなさそうなので桜に言うと、力一杯返事された。
この分なら大丈夫だろう、多分。
イリヤスフィールだって、堂々と昼間襲ってくることはない…だろうし…。
「それじゃ、学校でね。あ、衛宮君」
「ん?なんだ、遠坂」
「セイバーは霊体化出来ないんだから、もしもの事を考えるなら学校は休んだ方がいいわよ。あと、一人の行動もイリヤスフィールの事が片付くまではNG。無理強いは出来ないけどね」
一応、釘を刺しておく。
後ろの気配は素直に衛宮君が聞くとは思えないと言いたそうに揺らめいた。
「でも、魔術師ってのは人がいるところでは争わないものだし…夜にならないと襲ってこないもんだろ?なら大丈夫だよ」
予想通りの言葉が返ってきて、後ろの気配はまた揺らめく。
「もしもの時は令呪を使ってもセイバーを呼ぶ事。それだけは忘れないでね」
「ああ。分かってる」
言っても無駄だと言いたげな気配を無視して、私は忠告をした。
仕方ないじゃない、これが私の性格なんだから。
話を終えて衛宮邸をでると、アーチャーは実体化して隣りに並んだ。
「君はしなくてもいい苦労を背負い込むようだな」
「これが私なんだもの、仕方ないでしょう?」
「君は魔術師としてとても優れているが…甘い部分は捨てきれないのが弱点だな」
「だから、それは」
「だが、そこが君のいい所でもあるからな。仕方あるまい」
くく、と笑って私を見下ろすアーチャー。
コイツ、それを言うためにワザと挑発したのかしら…?!
「分かってるなら言わなくてもいいじゃない」
私は顔を背けて言った。
あの、自信満々な顔を見たくなくて、顔を背けた。
自信満々な上に満足そうな笑みを浮かべているのかと思うと、腹が立つけど動揺するって言うか…
いつもこういう展開に持っていかれると私には勝ち目がない。
イリヤスフィールが動けば聖杯戦争が動くって分かってるのに、それに意識が集中できないのは…コイツのせいなんだろう。
それが当たり前のように私の歩く速度にあわせて車道側を歩くアーチャー。
私のアーチャーという言葉にどれだけの思いを乗せているかなんて、きっと知らないんだろうな…。
ホント、こんなので明日からやっていけるのかしら…私…。

続く