どうしようもない絶望が目の前にいる。
こうなると、衛宮君が勝手に逃げ出してくれる事を願ってしまうんだけど。
「シロウが気になる?無駄よ、シロウには動けないように魔術をかけてあるから」
セイバーに向かってではなく、私に向かって言うイリヤスフィール。
連れて行く時にかけた暗示かなんかの魔術なんだなろうけど…衛宮君、そういうの解けるのかしら…?
「凛」
潜りかけた思考を止める、アーチャーの声。
「何、アーチャー?いい案でもある?」
「一か八かだが…今から爆煙で向こうの視界を奪う。その隙に君は遠回りでもいいからアインツベルンの城に向かえ」
私が城に到達すれば、初めの作戦どうり。
サーヴァント二騎を相手にするのなら、バーサーカーと言えども苦戦するだろう。
イリヤスフィール単体なら攻撃魔術は使えないから問題ない。
城の中に誰かいないとは限らないけれど、いたらその問いはその時だ。
「いいわ、それで行きましょう」
軽く周りを見渡して、城へのルートを調べる。
右側は木の密度もあるし、日陰で見にくい様だ。
アーチャーからの合図が来る前に少しずつ移動をする。
形的には援護をしようとしているかのように振舞っておく。
私の進む方向とは違う方へと押されていく二人。
アーチャーが木に着地し、弓を番える。
狙うのはバーサーカーの足元。
バーサーカーの蹂躙によってさっきから砂が舞っているあたりだ。
『行くぞ』
アーチャーの思念が届くと同時に、私はダッシュ。
巻き上がる砂と攻撃の余波で、バーサーカーの巨体が砂に隠れる。
ここぞとばかりに走る私。
魔力で強化したらばれちゃうので、自力で走る。
砂埃があるうちに何とか走り抜けて、バーサーカーははるか後ろ。
気づいたかもしれないけれど、これだけ離れれば二人を制して追いついてくる事は出来ないだろう。
正面から堂々と入り、魔力を探って衛宮君を探す。
強い魔力があるけど、これはきっと違うんだろう。
なら…二階の部屋から感じる魔力がそうなんだろうか?
二階へと駆け上がり、かすかな魔力を感じる部屋へと向かう。
普通にドアを開けると、椅子に座っている衛宮君を発見した。
「大丈夫、衛宮君?」
どうやら縛られている…ん?
「大丈夫だ、遠坂。これ、さっき解いたから解けてるんだ」
「そ、そう…」
解けてるって言うか、千切れているように見えるんだけど。
「どうやってイリヤスフィールの魔術を解いたの?」
「魔術回路をフル回転させたんだ。おかげで焼ききれたところあるみたいだけど」
「無茶苦茶ね…ま、それについては後でゆっくり話すわ。今はここを急いで出ましょう」
外では二人がバーサーカーと交戦中だ。
衛宮君さえ確保できれば立て直すために引く事もできる…と思う。
桜も後から追いかけるなんて言っていたけれど、来るのが遅い。
もしかして何かあったんだろうか?

続く