「サクラ、どうしますか?」
相手はすでに戦うつもりでいる。
いや、戦うではなく一方的な殲滅のつもりかも知れないが。
「どうした小娘。前回のようには攻撃してこないのか?それならばこちらから行くぞ」
邪悪な笑みを浮かべて右手を高くあげるギルガメッシュ。
その直後に、浮かび上がる大量の宝具。
その中には因縁の宝具も含まれていた。
「ライダー」
「まずいですね、あれを持っているのは」
二人はギルガメッシュの背後に浮かぶ一つの宝具に視線を走らせ、今ここで逃げに徹するのか反撃に出るのか考えた。
ギルガメッシュはまだライダーの正体には気づいていない。
ならば、隙を突いて逃げに徹する事も出来るだろう。
「サクラ…」
ライダーの呼びかけに頷く桜。
振り下ろされるギルガメッシュの右手にあわせて、ライダーは逃げの一手を打つ。
それは、あの日の再現だった。
前回は偽りのマスターを助け、今度は本当のマスターを助ける。
逃げて隠れるならアインツベルンの森。
あそこならばサーヴァントが二騎おり、五大元素の使い手と名高い凛の手を借りる事ができる。
ギルガメッシュと言えど三騎もサーヴァントがいる場所へと来る事はないだろう。
「行きますよ…!」
発現する目にも映らない速度の光。
ギルガメッシュの真横を抉るように通り過ぎた光は、一直線に森へと向かった。
「逃げたか…まあ良かろう、命拾いしたな…だが、今度はそうは行かんぞ」
逃げた事にさして反応する事も無く、ギルガメッシュは邪悪に歪んだ笑みを浮かべたまま教会へと戻って行った。


「どうやら上手く巻く事ができたようですね」
「良かった…ついてきていたらどうしようかと思ったから…」
森の側まで来た二人は、ギルガメッシュから逃れた安堵とこれからバーサーカーの元へ向かう不安で一杯だった。
ライダーとしては、精神を追い詰めたり不安定にしたりする戦場へは出来るだけ桜を出したくは無い。
もし暗黒側に傾いたまま戻れない事になったら、彼女は自身を攻めるだろう。
それを阻止するためには出来るだけ争いから離れていてもらう事が一番なのだが…
きっと、彼女はそれを良しとはしない。
森の中へと向かうマスターを見て、ライダーは不安を隠す事はできなかったが、出来る限りのことはしようと心に誓っていた。
さしあたっては彼女の姉、遠坂凛に助力を願おう。
現在どんな状況なのかは分からないが、彼女なら良い案を出してくれるはずだ。
この時凛と士郎が大変な事態になっていたのだが、それを二人が知るのは後の事。
バーサーカーと交えている二騎のサーヴァントを見つけ、バーサーカーをどうにかした後に知る事である。

続く