遠坂さんちの家庭の事情

 20

衛宮君の家に着いて感じた異変は、町全体にあったはずのキャスターの気配。
綺麗さっぱり消失して、微塵も感じられない。
「どうしたのかしら…?まさか消滅?」
「さあな…だが、見る限りでは姿が無かったぞ」
見張りの定位置と化した屋根から戻ってきたアーチャーは、いつも通りの表情で報告してきた。
「ライダーには分かる?」
「いえ全く…直接行かなければ確実な事は言えません」
戦い続けてこっちは限界だ。
とてもではないが、見にいけるような余力は無い。
「その事については後回しにしましょう。それよりも今は休息の方が必要だわ」
そして、セイバーには食事を。
そうじゃないとセイバー、現界していられなさそうだし…
「そうだな、簡単なものでとりあえず食事にしよう」
私の言葉に頷いて衛宮君は台所に向かう。
後を付いて行ったのは桜。
二人で作った方が早いからだろうか。
「アンタも消費してるんでしょ、先に遠坂に戻る?」
「いや、見張りに戻るよ。霊体化していれば君の負担も軽減されるからな」
「そう、じゃあ帰る時には声かけるわね」
軽く右手を上げて、消えていくアーチャー。
疲れている割にはタフなのよね、アイツって。
「セイバー、大丈夫?」
「今のところは…宝具を使ったので少し魔力が足りない感じはしますが、今すぐにという訳ではありません」
どうやら本人の体内魔力で何とかなっているらしい。
どこまでも規格外なサーヴァントだなー。
「ライダーはどうなの?」
「私はあまり消耗してはいませんので…それよりもサクラの方が心配です」
「そういえば、来るまでに何かあったみたいだけど…」
すぐに追いつくと思っていたけど、質悪いのに絡まれたらしい桜たち。
「アーチャー…いえ、ギルガメッシュに襲撃されました」
「目的は…」
固まったセイバーを気にしつつ、問う私。
「セイバーです。セイバーが居ないと分かるとあからさまに不機嫌になりました」
それは…また、キツイ…
「ご愁傷様。逃げおおせたんでしょう、良かったわ」
「ただ、あのサーヴァントとサクラをあわせるのは危険です」
「黒化…しちゃうってこと?」
「気づいていたのですか?」
小声で話した私に合わせて、小声で問うライダー。
「前に、セイバー目当てで金ピカがここに来た事があったでしょう?その時にね…」
目の前で起きていないとしても、あの距離で気づかなかったら魔術師を辞めた方がいいと思う。
忘れようにも忘れられない気配。
「アイツに会うたびに偏ってる感じがあるのね?」
「はい…サクラは気がついていないようですが…」
まずい、だろう。
どこから流れている魔力なのかは分からないが、私の魔力量を遥かに超えている。
あんなのが敵になったらそれこそ世界が終わるかもしれないし、何よりも桜が持たないだろう。
それが、今は気になる。
柳洞寺の件は気になるけれど、それよりも、もっと。
このまま嫌な予感の方に傾いて欲しくないと願う。


続く