結論から言うなら、柳洞君は無事でお寺もなんともないということだった。
ただ、一つ違った事といえば担任であるはずのキャスターの旦那…もとい、葛木の姿が無いことだった。
副担任の先生が臨時で担任としてホームルームにきていたけれど…
腑に落ちないから聞こうと思っていたら、その事については衛宮君が柳洞君から聞いてくれていた。
なんでも、婚約者と一緒に姿を消したという事らしい。
柳洞君のうちでは大事にしようとは思っていないようで、一定の時間が経っても帰ってこなければまた何処かへといったのだろうと考えるとの事だった。
来た時も突然現れたから、いなくなる時も突然だと考えているらしい。
まあ、葛木らしいといえばそうなんだろうけど。
これでキャスターの不在が決定的になった。
この街の気配の消失から考えても、脱落したと考えて間違いないだろう。
やったのは…おそらく金ピカ。
いくらあのランサーが凄腕であっても、キャスターとアサシン二人を相手に短時間で肩付けるのは難しいと思うのだ。
だけど、あの金ピカなら…有り得る。
あの夥しい宝具の数。
あんなものを食らえば無傷ではすまない。
いかに剣技に秀でているとはいっても、避けきる事は不可能だろう。
アサシンはあの場所から動けない。
そうなってくると他のサーヴァントよりも不利なはずだ。
確証は無いけど…間違いないだろう。
あいつが次に誰を狙うのかは分からないけれど、次は恐らく…。
確率論で言うのなら、私と衛宮君ちは半々と言いたい所。
だけど、アイツには普通の計算は当てはまらないだろう。
サーヴァントが二人でも苦労しないのだから、どっちも狙うには困らない。
ただし。
セイバーの存在で変わってくる。
執拗なまでにセイバーを追いかけているアイツの事だ。
また衛宮君の家に来るに違いない。
その場合危険なのは桜。
ライダーが付いているとはいえ、相手はあの金ピカ英雄だ。
「まてよ…?」
本来なら一番狙いやすい単独行動のランサーを、どうして金ピカは狙わないんだろう?
居場所が分からない?
そんな事はないはずだ…でも、そう考えると噛み合わない事がある…。
「本人が出てくれると分かりやすいんだけどね…」
屋上での昼休み、考え事をしていて呟くのは癖になりつつある。
「本人とは…誰の事かね?」
誰もいないので現界して風除けになるように座るアーチャー。
「ランサーの事よ。あれ以来出てこないじゃない?聞きたいことあるのにって思ったの」
教会にでも行けば、ランサーの生存の有無が分かるんだろうけど…なんか、金ピカいそうで行きたくないんだよね。
あの教会の陰険な雰囲気とマッチしているというか…
「そういえば、最近見かけていないな…」
「でしょう?あの時は教会を嫌がっているみたいだったから、そのままいなくなっちゃったし…うちにも最近来ないし」
「それについては問題ない…ではなくて、最近見ないということは脱落したのではないのかね?」
そういえば、ランサーが来るの嫌がっていたんだっけ、アーチャー。
「脱落したとしたら…相手は金ピカ?」
「その線が濃いだろうな。ランサーを倒したとなるとキャスターでは無理だろうし、バーサーカーは戦っていないようだったしな」
アーチャーの言うとおり、イリヤスフィールは一度もランサーの名を口にはしていない。
眼中にないのもあるのだろうけど、きっと出会っていないから。
「こうなってくると、一度聖杯の出現場所に言ってみる方がいいのかもね」
聖杯は聖杯でも大聖杯。
アインツベルンの用意する聖杯ではなく、この地にある聖杯の方だ。
「その場所は知っているのかね?」
「愚問ね、アーチャー。私を誰だと思っているのよ?管理者たるもの、その位は把握しているわ」
「そうだったな、これは迂闊な質問だった」
そういうとワザとらしく頭をたれてみせるアーチャー。
嫌みったらしい動作のはずなのに、やはり三騎士の一人だからか動作に違和感もなく似合っている。
そこが余計に手に負えないというか…
とりあえず、問題は山積みだけどやることは見えてきた。
午後の授業を真面目にこなしてから行動する事にしよう。
続く