担任の言葉を遮って、自分で自己紹介するサーヴァント。
「って、妻?!先生の奥さんですか?」
ハートマークがもれなくついてきそうな雰囲気を漂わせたサーヴァントと、そんな雰囲気は微塵も感じない担任。
「む?なら…結婚するか?」
これまた予想外な発言が飛び出した。
妻って言ったのに結婚してないのか。
召喚されたのちょっと前だからしてなくて当たり前なんだけど。
「はい!メディアは幸せ者です!」
ハートの嵐。
とても居づらい雰囲気なので退散することにしよう。
「私失礼します。どうぞごゆっくり」
緊張して魔術回路開いて損した気がする。
あてられて終わりなんて気分が良くない。
さっさと帰って忘れた方が自分のためだ。
そんなことを考えながら階段を下りて下駄箱に着くと、手伝いを終えた衛宮君と遭遇した。
「あら衛宮君、今帰り?」
「遠坂こそ今帰るのか?」
夕日をバックに衛宮君の赤毛がより赤く染まる。
私が好きな赤とは違うけど、綺麗な色だと思う。
そんなことを考えてしまったから私は忘れていたのだ、非常事態でアーチャーが学校に向かっているであろうことを。
途中まで、一緒に帰る事になったので衛宮君と並んで歩く。
生徒会長はどうしたのかと聞いてみたら、まだ生徒会の仕事が残っているから帰れないので先に帰るようにといわれたとのことだった。
家が遠いにもかかわらずご苦労様なことである。
「遠坂はいつもこんな時間なのか?」
「今日はたまたまよ。いつもは授業が終わればすぐ帰るから」
「へえ、運動神経良いのに部活はしてないんだな」
「家でやることがあるから、しないことにしてるの」
ここであえて部活はしていないのかとは聞かない。
衛宮君の部活の事情は桜から聞いているから。
声が似てるとは思ったけど、弓が得意なところも似てる。
もしかして同属嫌悪なのかしら?
でも、衛宮君はアーチャーみたいにひねくれてないしな…
「ん?どうしたの、衛宮君?」
考えながら歩いていたら、少しだけ前を歩いている衛宮君の背中にぶつかりそうになった。
声をかけても衛宮君は返事をしない。
不審に思って衛宮君の視線を追う。
それで初めてすべての理由を知った。
目の前には戦闘用の礼装のままのアーチャー。
さっきは普通の服装だったから誤魔化せたけど、今回は無理だ。
どう考えても誤魔化せないような不思議な服装をしている。
「アンタ…何者なんだ?」
硬い、低めの声でアーチャーに尋ねる衛宮君。
「アンタ…今、何も無いところから急に現れたよな?」
げ。なんてことをしてんだアーチャーは。
「お前こそなんで凛といるのだ?」
いや、焦点そこじゃないし。
「たまたま帰り道が途中まで一緒だから一緒にいるだけよ」
一般人に殺気を向けてどうするか、この馬鹿サーヴァント。
いつもよりも余裕が無いのか、少ししゃべり方が変だぞ?
「アーチャー。解決したから家へ戻りなさい。私も一緒に帰るから」
とにかく離さないと衛宮君に攻撃しそうで恐ろしい。
「しかし…」
「マスターの命令は絶対よ。聞けないの、アーチャー?」

続く