遠坂邸・居間にて

「凛、移植版のfateが発売らしいな」
「そうよ。色々と増えてるみたいね、立ち絵とか内容とか」
優雅に紅茶を飲みながら会話を交わす二人。
「内容に変化が出るということは、勿論18禁要素がなくなったということだな」
「そりゃそうよ、全年齢向け健全版ですもの。その分、増やしたみたいよ」
一口紅茶を飲むと、凛は茶菓子として置かれていたクッキーに手を伸ばす。
その様子を見ながら、しばし考え込んでいたアーチャーだが。
「絵に関してはどんなものが増えたのかね?」
「んー、公表されているものでは私のアーチャー召喚シーンとか、あなたの弓を番えているイラストとかね」
やや偏った情報で答える凛。
「なるほど、君と私の出番が増えているということだな」
「まあね。どのくらいの内容かは分からないけど」
アーチャーは急に何かに思い当たったのか、悪戯を思いついたような目をして笑った。
ただならぬものを感じた凛だったが、紅茶がまだ残っているので逃げることは出来なかった。
せっかくの美味しい紅茶を残すことは凛のアイデンティティに関わるのだろう。
「なによ、その笑顔」
言葉で牽制して見るが、いまいち効果は無いようだ。
余裕たっぷりの笑みを浮かべて凛を見つめるアーチャー。
相手が凛でなければ落とせていそうな笑みである。
「いや?君と私の出番が増えたということは、勿論望まれている展開が増えていることを期待しても構わんのだろう?」
凛は意図している事がなんなのかは瞬時に理解することが出来なかったが、
背筋に走った冷たいもので危険を察知していた。
「望まれていることって何よ?誰が望んでるの?」
恐る恐る尋ねる。
「分からんかね?」
席をおもむろに立つアーチャー。
つかつかと凛に向かって歩き出すと、笑みが一層意地悪感を帯びた。
「なっ…説明するなら口でしなさいよ!側に来る事ないでしょ?!」
焦って、そう言ってしまったのが運の尽きだった。
側に来て凛の視線に合わせる様に跪くと、凛が逃げるよりも早く凛の腕を掴んだ。
「ちょっと、何考えてるのよ?!」
凛は突然の状態にパニックになっていた。
普段の凛ならば自分の失言と、アーチャーの性格とでこの先の展開を予想できたのだろうが…
振りほどこうと視線を腕に移した瞬間、視界はアーチャーの顔で遮られた。
「何、君が口でしろといったのでな?」
いけしゃあしゃあと言ってのけるアーチャー。
「な…」
「弓凛ファンの期待に答える内容が増えているのだろう?コレくらいはあって当然だと思うのだが」
言葉を出すことも出来ず固まっている凛に、アーチャーは決定的な一言を放った。
「もしやすると君と私のエンディングがあるかも知れんぞ?なんなら君との魔力補給シーンを用意してくれても構わんが…」
そこで、アーチャーの言葉は遮られた。
凛の強烈なアッパーがアーチャーにヒットしたのだ。
「なぁに考えてんのよ、このばかサーヴァント!ある訳ないでしょう、そんなシーンっ!!」
「それではなにかね、君は私とのエンディングは嫌だというのか?」
殴られてもダメージがないのか、普通に立ち上がってくるアーチャー。
「そっ、そんなことは言ってないでしょ?!そうじゃなくて、だから…そういうシーンは無いって言ってんのよっ」
続く