凛が意図的に避けた言葉を理解して再び意地悪な笑みを浮かべるアーチャー。
「そうか…全年齢版だから18禁指定になるようなシーンはないと言いたいのだな?」
「当たり前でしょう?!」
その通りだと肯定する凛だが、策に嵌った事には気づいていない。
「凛、君は魔力補給がそういう行為をしないと出来ないと思っているのかね?」
「え?……あっ」
「私のことは嫌いではなく、そういうシチュエーションを想像したと?」
「あ…う…」
全力で肯定してしまった以上、誤魔化すこともできない凛は真っ赤な顔で俯いた。
「補給するならキスだって、君の血を貰うことだけだっていいはずだろう?」
「そう…だけど…」
ますます俯いていく凛。
「君は…私とそういうことになってもいいと思っているのか?」
「それは…」
ますます赤くなっている頬が、アーチャーの問いを肯定しているようなものだと凛は気づいていないようだ。
「アーチャーこそ、何を期待しているのよっ?私達の意見くらいじゃ内容は変わらないんだから!」
意を決して反撃する凛。だが。
何故かアーチャーは穏やかな笑みを浮かべて凛をみつめていた。
それに驚いた凛は慌てて顔を逸らす。
「君も…同じ気持ちなのだろう?」
「アーチャー…」
凛を見つめるアーチャーの視線は穏やかで、凛は赤面していたのも忘れて見入ってしまった。
抱きしめてくるアーチャーに抗うこともせず、凛はただなされるがまま。
動けない、というよりは動きたくないと凛は思った。
同じ気持ちということは、アーチャーもまた自分を思っていてくれるかもしれない。
その期待を否定したくなくて凛はアーチャーに身を委ねていた。
「凛…君はこんなことを言ったら私を怖がるだろうか…?」
耳元で囁かれる言葉は、凛を更に赤面させた。
「な、何?」
顔が見えないのでほっとしつつも、半分は残念だと思った。
相手に見られないということは、 相手の顔も見ることが出来ないということだからだ。
「君を…このまま私のものにしてしまっても構わないかね?」
「それって」
言いたいことは理解できた凛だが、自分でその先を言うことは躊躇われた。
そんなことを言われるのも口にするのも初めてなのだから、当然のことだろう。
アーチャーは凛の不安を感じ取っているのか、抱きしめる手に力を入れた。
「私は契約が終われば消える身だ。拒否してくれても構わない」
契約が終われば消える。
それは凛も覚悟していたことだ。
だが、それでも自分を抱きたいと言ってくれる。
思っていてくれるその気持ちだけで凛は心が満たされていた。
「サーヴァントである私がこんなことを言うのは君に令呪を使われてもしかたがないのだが…君に告げておきたかった」
凛の答えを待たないまま、アーチャーは独白を続ける。
「君は…どう思っているのだろうか?」
いつも強気で、自信にあふれた行動をするアーチャー。
だが、その彼も凛に本当の気持ちを告げることは恐れている。
「嫌じゃ…ないよ」
それは小さな声だった。
「え?」
思わぬ返答に、アーチャーは聞き間違いではないのかと思った。
「だから、嫌じゃないって言ったのよ…それとも、アーチャーは私じゃ不満?」
少し震える手をアーチャーの腕に添えて、凛は勇気を出して答えを告げた。
「誰かと…そういうことするのなら、初めてはあなたが良いって言ったのよ…それとも初めてって女じゃ…嫌?」
怖い気持ちが無いわけではない。
だが、凛はその気持ちを強気な発言で押さえ込んだ。
続く