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願い事、一つだけ。

先輩のことを、好きなんだと自覚してからは速かった。
だけど、あれから先輩とは会っていないし、私の気持ちも伝えていない。
まさか私が好きだったなんて知りもしないで、ただひたすらにどうしたらいいのかを考えているのではないかと思う。
恋とはするものじゃなくて落ちるものとはよく言ったのもだ。
本当に、降って来たように思うし。
部活も友達の部活の幽霊部員(名前貸しただけ)くらいで、やることも無く教室にいたりする。
今頃は校庭で…って、今日は雨だから先輩たちは屋内球戯場で筋肉トレーニングしてるかな。
特にやることも無く、だったら帰ればいいのにと自分に突っ込みを入れながら、それでも教室にいる。
理由なんて無い。
でも、心のどこかで待っているのかもしれない。
「まあ、ありえないだろうけどね…」
独り言を呟いて、やろうと開いていた宿題に視線を落とす。
だから、教室に面した中庭を走る人影に気づかなかった。
この天気で中庭を通る人がいるとは思わなかったのだ。
「蒼葉」
低い声が後ろからかかる。
クラスメイトの声じゃない。
いや、それ以前にクラスの男子は私を名前で呼ばない。
顔を上げて振り向くと、そこには予想通りの人物がいた。
「時任さん、部活は?」
何でここにいるの?とか、何しに来たの?とか聞きたいことはあったけれど、一番先に浮かんだのはそのことだった。
「もう終わった。自主練だったから、みんな先に帰ったよ」
「何しに来たの?」
時任さんは息を切らせるでもなく、教室の後ろのドアから入ってくる。
よく見れば制服は少し塗れている。
「何しにって、蒼葉に会いに来たんだけど。そういう蒼葉は宿題やってるのか?」
私の手元の開かれたノートと教科書を見て、聞く。
「家だと落ち着いて出来ないので、いつもやっていってるんです」
適当に返事して笑ってみせる。
別に先輩を待っていたんじゃないとアピールするためだ。
「そっか。待ってたとか言うんなら嬉しかったんだけどなー」
「何でここにいると思ったんですか?」
残念そうに呟いた先輩に、疑問をぶつけてみる。
「ここならいるんじゃないかと思っていたんだ。前に見かけたことあるし」
鋭い読みだと思った。
でも、それならいつだって来れたはず。
「今日はどうしてきたんですか?」
この際だから、聞いておけることは全て聞いてしまおう。
「ん?んーまあ、色々とね。お願いがあってきたから、かな?」
お願い?
先輩の言葉は謎掛けのように意味が分からなかった。
「色々あるとお願いに来るの?」
「時と場合によるかな」
いつも通りのにこやかな笑顔を浮かべた先輩は、静かな足取りで側まで来る。
「それって、今日じゃなかったら来なかったと言うことですか?」
「そういうことになるね」
表情を崩さないまま、すぐ側まで来て止まる。
「で、お願いとは?内容によってはお断りしますけどいいですか?」
「いや、今回は拒否権なしで」
続く