そういえば、高校で部活に入ったばかりの頃に言われた言葉があったな。
あの時は確か、中学の入学式で見かけたとき、可愛いと思ったって言ってたっけ?
それを私に思うなら、よく似ていると言われる従妹も可愛く見えただろう。
というか、従妹の方が可愛い気がする。
言われたときは何で今更言うんだろうとか思ったけれど、もしかしたら告白の複線だったのだろうか。
だとするならこっちが向こうを知る前からと言うことになる。
それって、辻褄が合わない。
それじゃあ、彼女と別れた原因は私ってこと?
それは最悪な状況だ。
そんな事情も知らずに、私は二人の近くで過ごしてきたのかもしれない。
彼女を振ったのか、振られたのかは知らない。
でも、原因が私であるのならば絶対に縦には首をふれない。
と言うか振ってやらない。
尊敬する先輩の彼氏を奪うような真似、出来ない。
考えがまとまれば後は簡単だ。
授業が済んだら顧問の先生のところへ行って、部活をやめよう。
そりゃもう潔く。
接点を絶って、冷めるのを待つ。
もう勘違いなんかさせない。

その後の行動は速かった。
今月一杯での退部を取り付け、部活に行く。
部長の元へ行って、適当な理由を言い、退部する旨を話す。
驚いていたけれど、反対は無かった。
何しろ、女子部員私だけだから。
三年の先輩たちにはいつも、いつ辞めてもいいからねと言われていたし。
そんな訳で退部はすんなりと出来た。
すんなりいかないのは先輩のことだけ。
部に入ってから半年で退部って言うのもどうかとは思ったけれど、こればっかりは仕方が無い。
しばらくは友達の部室で遊ばせて貰おう。
これも、顔を合わせないための作戦。
波乱はこれだけでいいや…なんて思っていたら、翌日も大波乱だった。
ありえないと思った。
二日連続で告白されるのってどういうことなんだろうか。
しかも、同じ場所。
違うのは全く初対面の先輩だって事くらいだろう。
名前も知らない、それでどうやって付き合う気なんだ。
せめて名乗れと思ったことは内緒だけど、本当に思った。
好きな人がいると断っても、忘れさせて見せると引いてくれない。
質が悪い。
やっとのことで開放されてうちに帰ると、友達だと言う人からの電話で、付き合ってやってと頼まれる。
その日一日はそれだけで忙しく終わった。
人生に一度は必ずそういう時期があるらしい。
でもよりによって一番疲れてるときに来なくてもいいんじゃないのとか愚痴りたくなりつつ、慎重に過ごして。
1ヵ月乗り切って退部した。
そのことを知らなかった先輩は驚いて、それは本当なのかと詰め寄ってきた。
学園祭二日目の、ちょっとだらけてきた感じの午後。
友達とまったりしていたら、向こうが探し出してやってきたのだ。
事実なので素直に頷いた。
ただならぬ空気に、だらけていた他の生徒が興味本位で寄ってくる。
このままでは大変なことになるかもしれないと思い、場所を移す。
接点を絶つ作戦が裏目に出たようだが、この際は気にしない。

続く